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発熱と頚部の痛みを伴った髄膜炎を発症した犬に関する症例報告

投稿者:武井 昭紘

ワイヤーヘアード・ポインター(15ヶ月齢の去勢オス)が、3週間余り続く頚部の痛みを主訴に、ウィスコンシン大学付属動物病院を訪れた。3週間前には発熱もあったようだ。カルプロフェン、プレドニゾロン、ガバペンチン、トラマドール、アセトアミノフェンetc。様々な薬剤が試されるも、症状が解消されることはなかった。加えて、下痢も併発し、満身創痍と呼べる状態であった。一体、彼の身に何が起きたのだろうか。

脳脊髄液(cerebrospinal fluid、CSF)が分析された。その結果は、好中球が増加しているというものであった。ステロイド反応性髄膜炎・動脈炎 (steroid responsive meningitis arteritis、SRMA)が第一に疑われた。しかし、状況は一転する。好中球の中に、好塩基性の短桿菌が存在していたのだ。この桿菌の正体は、Bordetella bronchisepticaだった。低用量のプレドニゾロンを3.5ヶ月、ドキシサイクリンを1年間投与され、診断から5ヶ月目にして弱くも歩行が可能となり、7ヶ月目には完全に回復した。本症例は、発症の3~4週間前、同菌の生ワクチンを鼻腔内に接種していた。完璧にとは言えないものの、ワクチン株と分離株のゲノムは類似していたという。

 

『Bordetella bronchisepticaによる髄膜脳脊髄炎を発症した犬の初めての報告である。』

大学は、このように述べる。また、CSF中に多数の好中球が認められた場合は細菌感染症を疑うべきと訴える。接種後2〜5日での咳または鼻汁を呈することがあるとされる、このワクチンの副反応として、髄膜脳脊髄炎はどれくらいの確率で発生するのか。今後、その確率を算出し、副反応への対処方法が検討されていくことに期待している。

ワクチン株と分離株のゲノムが完全に一致しなかった理由につきましては、リンク先の論文(考察)をご参照ください。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.852982/full


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