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1週間続く「しぶり」を呈した犬が抱えていた腫瘍と尿検査

投稿者:武井 昭紘

「しぶり」が1週間続いている12歳齢の犬が、コロラド州立大学を訪れた。この症状を精査するためだ。そこで、過去の病歴を確認する。6年にも渡って高グロブリン血症が認められている。しかし、詳細な検査は行われていない。同大学は、尿検査を実施した。沈渣を顕微鏡で観察すると、中型から大型のリンパ球が出現していた。さらに、尿中に含まれるタンパク質の分析では、ベンズジョーンズ蛋白およびモノクローナルなガンマグロブリンが認められた。また、このグロブリンは血清からも検出された。一体、本症例に何が起こっているのだろうか。

形質細胞腫を疑うも、証拠は得られなかった。免疫組織学的検査で、その存在は立証されなかったのだ。だが、遺伝子検査にて、B細胞(CD21陽性、MHCクラスII陰性)の増殖が示された。そのため、化学療法が適応される。シクロスホスファミド、ビンクリスチンにプレドニゾロン。リンパ腫と診断してから21日。反応は乏しく、安楽死となった。

コロラド州立大学は、尿検査によってリンパ腫と診断された例は珍しいと述べる。果たして、類似する検査所見を有する症例は、他にも居るのか。犬の腫瘍の4分の一をリンパ腫が占めること、そして、犬の尿路系腫瘍の3分の一は尿検査によって特定されることを考慮するれば、可能性はゼロではないだろう。よって、今後、リンパ腫を診断する手法としての尿検査の価値を評価する研究が進められることに期待している。

本症例の剖検は行われていないとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35488188/


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