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セルトリ細胞腫に続発した骨髄抑制を抱える犬の転帰を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

最も一般的な犬の精巣腫瘍の一つであるセルトリ細胞腫は、潜在精巣に発生する可能性が非常に高いとともに、エストロゲンを産生する腫瘍細胞によって、罹患個体の生死を左右するような骨髄抑制を起こす特徴を有することが知られている。そのため、当該疾患に続発する骨髄抑制を呈した犬の転帰を知り、彼らの予後を改善する対策を考えることが重要だとされている。

 

そこで、北米の獣医科大学らは、過去10年間(2011年4月~2021年4月)において、骨髄抑制を伴うセルトリ細胞腫を抱え、且つ、外科手術による治療を受けた犬の診療記録7件を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆セルトリ細胞腫に続発した骨髄抑制を抱える犬の転帰◆
・全例が術後無事に退院していた(入院期間の中央値4日)
・しかし1件の症例が汎血球減少症により術後4週間以内に亡くなった
・約70%の症例(5件)が周術期での輸血を必要とした(全血、濃厚赤血球、血小板製剤、血漿など様々)
・85%の症例(6件)において骨髄抑制の症状(血球の減少)が改善した
・その改善は術後4週間以内に観察され始め、6週間以内に汎血球減少症の解消に至った。
・しかし約30%の症例(2件)で血小板減少症が慢性的となった
・57%の症例(4件)が1年以上生存した

 

上記のことから、手術に臨むにあたって多くの症例で輸血療法が必要となるものの、術後に骨髄抑制(血球の減少)が改善することが窺える。また一方で、血球の減少が改善しない症例が存在していることも分かる。よって、今後、「改善する」症例と「改善しない」症例の相違点を洗い出す研究が進み、骨髄抑制から回復する確率を上げる、引いては、1年以上生存する可能性を高める治療法が考案されることに期待している。

本研究には、骨髄抑制の治療のために塩化リチウムが投与された症例が1件含まれているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34921502/


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