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犬の中枢神経系に影響を与える炎症性疾患に関する疫学

投稿者:武井 昭紘

原因不明の髄膜脳炎(meningoencephalitis of unknown origin、MUO)に代表されるように、犬の中枢神経系(central nervous system、CNS)に影響を与える炎症性疾患の疫学には、いまだ不明な点が多い。つまり、その謎を解明することが獣医学の課題なのである。果たして、彼らのCNSを襲う炎症性疾患の背景にあるものとは。また、発症しやすい犬の特徴とは。イギリスの大学らが、当該疾患と診断された犬1100例以上の診療記録を解析して、以下の通り発表した。

 

◆犬のCNSに影響を与える炎症性疾患に関する疫学◆
・最も一般的なものが①免疫介在性疾患(約84%)であった
・次いで②感染症(約16%)が続く
・①ではMUO(約48%)およびステロイド反応性髄膜炎・動脈炎(約31%)が多かった
・②では椎間板炎(約9%)および耳性頭蓋内感染症(約2%)が多かった
・高齢、体重が重いこと、オスであること、初診時以前の経過が長いこと、症状が進行性であること、発症するキッカケが特定できること、初診時に神経過敏であることは感染症と診断される可能性を高めた

 

上記のことから、犬のCNSに影響を与える炎症性疾患には多くの場合、免疫が関与していることが窺える。加えて、前述した条件を満たすものは感染症が起因になっていることが分かる。よって、今後、これらの条件のチェックによって①と②を鑑別するアルゴリズムが開発され、罹患犬に感染した病原体の特定とMUOに対する治療方針の決定がスムーズに行われるようになることを期待している。

これからも犬のCNSに影響を与える炎症性疾患に関する研究が計画され、特にMUOの原因の追究や治療法の確立が進むことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2021.819945/full


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