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犬に咬まれて外傷を負った猫の疫学を明らかにした研究

投稿者:武井 昭紘

置かれている飼育環境によるだろうが、猫が犬に咬まれて負傷することがある。そして、最悪の場合、猫はそのまま亡くなってしまう。では果たして、亡くなってしまう個体と負傷から回復する個体の間には、どのような差異があるのだろうか。それを明らかにすることは、救命率を改善する上で非常に重要なことである。

 

冒頭のような背景の中、イスラエルの大学らは、犬に咬まれた瞬間を目撃された猫70匹以上を対象にして、彼らの診療記録を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が判明したという。

◆犬に咬まれて外傷を負った猫の疫学◆
・70%以上の症例が複数の傷を負っていた
・約80%の症例が無事に退院した(生存していた)
・傷の数および傷の重症度(Animal Trauma Triage Score、ATTスコア)と生存する可能性は有意に関連していた
・生存する個体と比べて死亡する個体では有意にATTスコアが高かった(正の相関関係)
・生存する個体と比べて死亡する個体ではTPとALBが有意に低く、ALTが有意に高かった
・50%の症例の傷に保存的治療、32%にデブリード、18%に創傷を切り開く処置が適応された
・侵襲性が強い治療を受けた猫の生存確率は大幅に低下した

 

上記のことから、犬に咬まれて外傷を負った猫の診察では、①ATTスコアの算出および②血液検査(特にTP、ALB、ALT)の結果が予後を示唆していることが窺える。また、③必要な創傷治療の侵襲度も、それ(予後)を推測させるものであることが分かる。よって、該当する症例を担当する獣医師は、①②③を基に死亡するリスクを考え、オーナーと治療方針を相談して頂けると幸いである。

同大学は、X線検査の結果(椎骨の損傷、胸壁・腹壁の損傷、貫通した傷の有無)も死亡リスク(生存する可能性の低下)に関与する因子として考慮する必要があると述べています。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33980052/


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