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Tuk’s Law~犬の「不必要な」安楽死を防ぐためのマイクロチップの活用~

投稿者:武井 昭紘

2017年12月22日、Tukと名付けられた、2歳にも満たない若いミオリティック・シェパード・ドッグが安楽死された。彼は、5週齢の時にルーマニアで保護され、里親を見付けるべくイギリスに移送されていた。何故、里親を見付けるために、つまり「生きる」ために訪れたイギリスで安楽死されたのか。その背景に潜むヒューマンエラーは、悲劇そのものであった・・・。

里親探しは、順調ではなかった。なかなか見付からない。そこで、彼には、Rescue Back Up(RBU)というシステムが適応された。RBUとは、保護された動物(ヒトの場合もある)の最終的な居場所が決まるまでの間、協力者が一時的に預かるシステムだ。Tukを預かった協力者には、ある条件が提示されていた。勝手に第三者にTukを引き渡してはならないという条件が。そして、彼に装着したマイクロチップにRBUを運用する組織と協力者の情報が登録された。そう、「二重」に情報が登録されたのだ。しかし、協力者は、この条件を破った。Tukの情報を、オンラインコミュニティサイトGumtreeに掲示したのである。かくして、Tukは、マイクロチップに登録されていない第三者の手に渡った。これが、悲劇の始まりだった。

第三者は、獣医師の下にTukを連れて行く。理由は判然としないが、安楽死を依頼するためだ。獣医師は、その依頼を引き受ける。安楽死は実行された。マイクロチップの情報を読み込まないままに。読み込んでいたら、気が付いたはずである。マイクロチップに登録されている者と第三者が異なることを。そこで、『おかしい』と感じれば、安楽死は踏みとどまれたかも知れない。「生きる」ために訪れたイギリスで、Tukは安楽死された。

この一連の事態を受け、イギリスでは、Tuk’s Lawの検討が始まるようである。「不必要な」安楽死を防ぐためのマイクロチップの活用を獣医師に求める法律だ。果たして、Tukの身に起きたような悲劇は他にもあるのだろうか。無いことを願うとともに、Tuk’s Lawが実効性を持って成立することを期待している。

安楽死を依頼された時、獣医師は「そうしなければいけない理由」の有無を真剣に考えるべきだと思います。

 

参考ページ:

https://www.jamesdaly.org.uk/campaigns/gizmos-law-and-tuks-law

https://thepeoplespetawards.co.uk/winners/2021-winners/special-recognition-2021-2/


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