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犬の気管に起きた裂傷を画像診断に頼らず診断した1症例

投稿者:武井 昭紘

イギリスはウェールズ原産の小型犬、ウェルシュ・テリアがケンブリッジ大学の付属動物病院を訪れた。主訴は頚部の創傷。他の犬に咬まれたとのことだ。しかし、問題は創傷ではなかった。本症例は、酸素吸入なしに動脈血酸素飽和度を維持できない状態にあったのだ。その理由を精査し、治療すること。それが大きな目的だったのである。

左側頚部の腹側、そこに長さ2cmの傷があった。そして、麻酔下での画像診断へと移る。気管に損傷は無いという結果だった。検査が終わり、麻酔からの覚醒。気管チューブのカフから空気を抜く。そこで、酸素飽和度が低下した。肺の損傷は無い。ならば気管かと担当の獣医師は考える。しかし、画像診断では何も見つかっていない。どうしたものか—–。

 

彼は、酸素濃度を測る機器に目を付ける。画像診断に頼れない今、この機器がカギになると。症例に100%の酸素を吸入させながら、創傷付近の酸素濃度を測る。明らかに空気中の酸素濃度と異なる値。気管は裂傷を起こし、そこから酸素が漏れている証拠だった。外科手術によって「目的」は達成された。

大学は、画像診断で発見できない気管の裂傷は、そこから漏れる酸素の濃度を測ることで見付けられると述べる。皆様は、あるかも知れない気管の裂傷を探すことに苦慮したことはあるだろうか。もしあるならば、今回紹介した症例報告を参考にして頂けると幸いである。

症例は7歳齢、未去勢オスだったとのことです。

 

参考ページ:

https://avmajournals.avma.org/doi/10.2460/javma.259.8.880


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