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脾神経刺激療法~脾臓に分布する神経を刺激することで炎症を抑える治療法~

投稿者:武井 昭紘

神経を刺激して免疫機能を調整し炎症を抑える、神経刺激療法が注目を浴びている。具体的には、ブタの脾臓に分布する神経を刺激することで、炎症反応をコントロールするといったものだ。しかし、これを臨床に応用するには、一つの課題が残されている。神経へ与える刺激を定期的に発生させるシステムを確立することだ。

そこで、イギリスの王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)らは、腹腔鏡手術によって取り付けられる埋め込み型のパルス発生器をブタの脾臓に設置し、炎症反応の制御状況を観察する研究を行った。すると、この発生器から生じる刺激は、全身性のエンドトキシン血症で誘発されるTNF-αの血中濃度を有意に低下させ、感染に対する抵抗力を弱める単球減少症を軽減し、炎症に反応した単球の全身組織への分布を減少させることが判明したという。また、炎症時に起きるプロスタグランジン等の放出の抑制も確認されたとのことである。

上記のことから、脾臓に分布する神経を刺激する、言うなれば「脾神経刺激療法」は免疫機能を調整する効果を有することが窺える。よって、今後、同療法が犬や猫、ひいてはヒトに応用できるか否かを検証する研究が進められ、既存の治療法ではコントロールが難しい炎症性疾患を快方に向かわせる手法が考案されることを期待している。

パルス発生器の移植後70日までの生理学的および病理学的検査で、脾臓に分布する神経の異常は検出されなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33859641/


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