コロナ禍で「おうち時間」が増えたことも影響してか、現在ポルトガルで飼育されているペットの頭数が増加している。そのため、彼らが食べるフードへの需要が高まり、同業界が成長しているそうだ。結果、これらの増産された製品に含まれる微生物、特に薬剤耐性菌の存在が食品としての安全性を脅かすと懸念されているという。
そこで、ポルトガル北西部に位置するポルト大学は、国内あるいは世界的に流通しているペットフード50種以上(フードのタイプはリンク先をご参照下さい)を対象にして、細菌の有無(PCRと培養による)とそれらの種における薬剤耐性の獲得状況を調べる研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。
◆ペットフードに潜む薬剤耐性菌◆
・感染症を起こすエンテロコッカス属(E.faecium、E.faecalis)が30の製品から検出された
・両種とも主にドライフードおよびウェットフードに混入していた
・エンテロコッカス属の40%以上が抗生剤(アンピシリン系およびニューキノロン系など)に耐性を持っていた
・多剤耐性菌の30%は「生のフード」から検出された
・熱で処理されたフードに混入した細菌は耐性を持たないものが主体であった
上記のことから、ポルトガルでは、薬剤耐性菌(臨床上問題になる菌種)の混入したフードが多く流通していることが窺える。つまり、原材料の選定や製造工程を見直し、衛生レベルを向上させるべき製品が普及してしまっていると言える。よって、今後、同国におけるペットフードの細菌検査が強化されることを期待するとともに、その必要性を検討するために、エンテロコッカス属による感染症(ヒトとペット)の発生状況に関する調査が進められることを願っている。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34144837/