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好中球/リンパ球比(NLR)~乳癌の猫の予後を判定する有用なマーカー~

投稿者:武井 昭紘

乳癌の猫の予後は、腫瘍サイズ、転移の有無、グレードなど様々な要因によって左右されるとされている。そのため、より強力な予後判定マーカーとは何か(既存の要因のどれか)について議論されることが多い。一方で、話は変わるが、好中球数とリンパ球数を基にした好中球/リンパ球比(neutrophil-to-lymphocyte ratio、NLR)は、猫の注射部位肉腫における予後を判定する有用なマーカーの一つであるとする論文が報告されている。つまり、NLRは、猫の乳癌における予後を判定するマーカーの候補としても有力だと考えられるのだ。

そこで、ポルトガルの大学および動物病院らは、ステージI~IIIに分類される乳癌に罹患し、且つ、乳腺切除術を受けた猫を対象にして、無再発期間(disease-free interval、DFI)と腫瘍特異的生存期間(tumour-specific survival、TSS:腫瘍によって亡くなるまでの期間)を算出し、TSSとの関連性を統計学的に解析する研究を行った。すると、2.46をカットオフ値として、NLRと両期間は有意に関連していることが判明したとのことである。

上記のことから、NLRは、注射部位肉腫と同様に猫の乳癌の予後判定でも、有用なマーカーになり得ることが窺える。よって、今後、冒頭に記した各要因とNLRとをリンクさせる研究が進められ、当該疾患の診療レベルが向上していくことを期待している。

乳癌以外の疾患に罹患している猫は除外されたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33576562/


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