犬とは全く異なることと言えるかも知れないが、猫には、ワクチン接種などの皮下注射を受けた部位に注射部位肉腫(feline injection site sarcoma、FISS)という悪性腫瘍が発生することが知られている。また、FISSは、外科的切除の際に、5cmもの大きなマージンを必要とするとされており、罹患個体に想像を絶する疼痛を与える病気であるとともに、広大なマージンを確保し、痛みを乗り越えた外科手術の先に、局所再発(Local recurrence、LR)という厳しい現実が待ち受けていることもある腫瘍性疾患として認識されている。
そのような背景の中、イタリアの大学らは、担癌患者または担癌犬において好中球/リンパ球比neutrophil-to-lymphocyte ratio(NLR)の上昇が予後を判定するマーカーであるとする報告が上がっていることに着目して、FISSに罹患した猫(外科手術適応症例)における白血球系の血液検査所見と予後との関連性について検証(変量解析)を行った。すると、前述したNLRに加えて、総白血球数(white blood cell count、WBCC)および好中球数(neutrophil count、NC)の変動は、全生存期間(overall survival time、OST)とLRを左右していることが明らかになったとのことである。
上記のことから、列挙した3つの項目は、FISSの猫の予後を判定するマーカーになり得ると考えられる。よって、FISSを抱える猫の診察を担当した際には、その個体の白血球系(NLR、WBCC、NC)の臨床検査データを確認し、治療方針を決定していくことが望ましいのではないだろうか。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31441996