ニュース

ストレスを軽減しつつ猫を動物病院へ連れて行く方法と麻酔管理に関する研究

投稿者:武井 昭紘

不妊去勢手術など麻酔を要する処置を控え、動物病院に連れてこられる猫たちの様子を見ていて思うことがある。慣れている飼育環境(自宅)でキャリーに入れられ、車に揺られ、行き着いた先は「慣れない」動物病院。そのストレスたるや、如何ほどか。そして、そのストレスは、麻酔や手術の成績に影響することはないのだろうか。

この疑問に答えるが如く、ヨーロッパの大学および動物病院らが、ある研究を発表した。なお、それによると、約70匹の猫を輸送ストレスのレベルで2つの集団に分け、①輸送中にフェロン製剤を使いつつキャリーにカバーを掛けてストレスを軽減したグループと、②前述の2つを使用しない対照グループ、両群の麻酔記録を解析したという。すると、②に比べて①では、鎮静に至る時間が短縮し、全身麻酔の導入に用いられるプロポフォールの用量も少なくなることが判明したとのことである。

上記のことから、猫の麻酔は「自宅を出発する前から始まっている」と言えるのではないだろうか。つまり、可能な限りストレスを感じさせないで動物病院に連れて行くことが、その猫の麻酔を安全に、且つ、スムーズに進めるポイントだと考えられるのだ。読者の皆様が勤める動物病院では、麻酔をかける予定がある猫のオーナーに、「運び方」を指導しているだろうか。もし「していない」のであれば、今回紹介した研究を参考にして、自宅から始まる麻酔管理を実践して頂けると幸いである。

キャリーに入れた猫を「徒歩で」動物病院まで運ぶ場合についても、同様の研究が行われることに期待しております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33645705/


コメントする