脊髄を損傷して生じた麻痺は、広く認められた有効な治療法がないため、一生涯に渡って続くことが一般的である。故に、この麻痺を改善するための治療法を開発することが、医学および獣医学の大きな課題となっているのだ。そのような背景の中、実験動物や犬において、①鼻に分布する嗅神経鞘細胞が損傷した神経の修復をし、②コンドロイチナーゼが歩行異常を回復させるという2つの研究の報告が上がっている。
そこで、王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)は、①と②を併せ持つ、つまり「コンドロイチナーゼを生成・放出する嗅神経鞘細胞」を開発して、脊髄損傷に伴う麻痺に対する治療法の確立を目指すことにしたという。なお、同細胞は犬由来であり、現時点ではラットの麻痺を回復させる作用を有していることが確認されているとのことである。
『次は犬、ひいてはヒトへ。』
RVCは、開発した嗅神経鞘細胞の未来を見据える。果たして、この細胞は、獣医学と医学における細胞治療の世界を一変させる希望の光となるか。今後の動向に注視するとともに、脊髄損傷に苦しむ犬、そしてヒトが何不自由なく歩ける明日が訪れることを切に願っている。
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