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病的に吸収されていく猫の歯に起きている遺伝子学的変化

投稿者:武井 昭紘

FORLに代表されるように、猫は歯が吸収されていく病気(Tooth resorption、TR)を発症することが知られており、その治療法として有効なものは抜歯だとされている。しかし、このTRの病態は全容が解明されておらず、抜歯以外の治療法が充分に確立していないのが現状である。だか、その裏で抜歯は一部のオーナーにとって、愛猫が激しい痛みに襲われるかのように思えて、なかなかに踏み出せないハードルが高い処置なのだ。

そのような背景の中、イギリスの大学らは、TRに罹患した猫10匹以上から歯からRNAを抽出して、その種類から病態を把握する研究を行った。なお、対象とした歯は、吸収病巣のある有る歯と無い歯で、それぞれの遺伝子発現が比較されている。すると、1700を超える遺伝子の発現に差異が認められ、その多くが破骨細胞の活性と分化(特にマトリックスメタロプロテイナーゼ9、MMP9)に関与しているものであることが判明したという。また実際、MMP9阻害薬は、破骨細胞の機能を低下させる効果を有していることが確認されたとのことである。

上記のことから、MMP9は、破骨細胞による歯牙の吸収を下支えしている酵素だと言える。よって、今後、MMP9阻害薬を用いた猫のTR治療が確立され、抜歯に変わる治療法として広く普及することを期待している。

発現に差異があった1700もの遺伝子の中には、まだ、猫のTR治療を進化させるヒントを与えてくれるものが隠れているかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33144645/


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