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犬の炎症性腸疾患を診断するためのマーカーを開発する血清学的研究

投稿者:武井 昭紘

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease、IBD)は、小動物臨床で比較的良く遭遇する腸の炎症を伴った病気の「総称」で、現在、治療反応性や病理学的所見などの様々な視点から、その病態を細かく分類するための研究が進んでいる消化器疾患である。故に、この細分類の実現に寄与する科学的データは、常に望まれている状況にある。

 

そのような背景の中、カリフォルニア州の動物病院らは、病理検査でIBDと診断された犬を対象にして、以下に示す血清中マーカーの存在を確認する研究を行った。

◆IBDの診断に有用なマーカーの候補◆
・多形核白血球に対する抗体
・カルプロテクチンに対する抗体
・グリアジンに対する抗体
・微生物外膜ポーリンC
・フラジェリン

すると、臨床健康な犬、および、急性胃腸炎などIBDではない犬と比較して、IBD罹患犬では、前述したマーカー候補の陽性率が有意に高いことが明らかになったとのことである。

 

上記のことから、これらの物質は、犬のIBDを診断する有用なマーカーになり得ることが窺える。よって、今後、治療反応性や病理学的所見の差異と、それぞれのマーカーの有無との関連性が解析され、IBDの細分類化にまた一歩近付けることを期待している。

研究を発表した動物病院らによると、多形核白血球に対する抗体と微生物外膜ポーリンCは、特に診断マーカーとして有望だとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32282988/


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