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パルボウイルス感染症の犬に対する高度免疫血漿の効果について検証した研究

投稿者:武井 昭紘

犬のパルボウイルス(canine parvovirus、CPV)感染症は、世界各地で発生しており、白血球の減少と重度の消化器症状を伴って、致死的経過を辿ることもあるウイルス性疾患として広く知られている。しかし、当該疾患には、死亡率を低下させるような効果を発揮する有用な治療法が確立されておらず、対症療法が適応されることが一般的となっている。つまり、「有用な」治療法の開発が、今後の獣医学の課題なのだ。

そのような背景の中、コロラド州立大学は、CPV感染症の犬を対象にして、高度免疫血漿(hyperimmune plasma、HIP)を用いた輸液療法の効果を検証する研究を行った。なお、研究に参加した症例31件は、全て心肺蘇生を受けており、文献に記されたプロトコルによって治療されている。すると、死亡率や入院期間の相違は認められなかったものの、コントロール群(生食を輸液)に比べて、HIP群(HIPを輸液)では、治療開始から24時間後におけるショック指数と血漿中乳酸濃度が有意に低下していることが明らかになったとのことである。

上記のことから、HIPを用いた輸液療法は、CPV感染症例の病態を改善する効果があるものと考えられる。よって、本研究を基に、母集団を増やした大規模な検証が実施され、「死亡率を低下させる」HIP療法の開発が試みられることに期待している。

本研究における死亡率は、HIP群で0%、コントロール群で約7%でしたが、統計学的な有意差は確認できなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32705762/


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