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イギリス国内における犬の糖尿病に纏わる疫学を調査した研究

投稿者:武井 昭紘

飼育頭数全体の約0.3~1%の犬に起きているとされる糖尿病は、小動物臨床の現場で比較的良く遭遇する代謝性疾患であり、血糖値のモニタリングとインスリンの投与によって加療することが、経過を良好に保つために大切であるとされている。故に、当該疾患の早期発見・早期治療は非常に重要で、そのために、糖尿病を罹患しやすい個体の特徴(疫学)を具に把握することは、大きな意義が有ると言える。

 

前述ような背景の中、王立獣医科大学は、イギリス国内における犬の糖尿病に纏わる疫学を調査する研究を行った。なお、同研究には、400を超える動物病院に通う3歳以上の犬48万匹が参加しており、糖尿病を発症する、または、罹患犬の生死を分かつファクターに関して、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆犬の糖尿病に纏わる疫学◆
・母集団と比較して、メスは約3倍、去勢オスは約2倍、糖尿病になりやすい
・交雑種と比較して、チベタンテリアは約8.5倍、糖尿病になりやすい
・非投与群と比較して、糖質コルチコイドを投与された犬は約2倍、糖尿病になりやすい
・10歳以上の症例、720mg/dLを超える血糖値を認める症例、診断前6週間に糖質コルチコイドを投与された症例、コッカースパニエルでは死亡リスクが上昇する
・不妊去勢手術を受けた個体、インスリンを投与された症例、ボーダーコリーでは死亡リスクが低下する

 

上記のことから、糖尿病を発症するリスク、そして、糖尿病で死亡するリスクは、個体側の要因や手術歴、治療歴によって決定されることが窺える。よって、今後、糖尿病を発症しやすい犬たちのために、前述したリスクを考慮した定期健診スケジュールが考案され、小動物臨床における糖尿病診療のレベルが更に向上していくことに期待している。

2016年の1年間における糖尿病の有病率は、0.26%だったとのことです。

 

参考ページ:

https://link.springer.com/epdf/10.1186/s40575-020-00087-7


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