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細菌汚染を防ぎ自己血輸血を実現する犬の血液の浄化システムに関する研究

投稿者:武井 昭紘

外傷、腫瘍(特に脾臓の血管肉腫)、手術などを原因として、ヒトや犬猫の血液は、血管の外へと流出し、少しずつ、あるいは、急激に失われていくことになる。故に、必要に応じて血液を補充すろために、輸血療法が適応される場合があるのだが、小動物臨床には大規模な血液バンクが存在しておらず、人医療と同様に「必要だから輸血用血液を用意する」といった準備ですら、ままならないのが現状である。そこで、誕生した概念が、血管外へと失った自分の血液を、再び、輸血に用いる自己血輸血なのだ。

前述のような背景の中、テキサスA&M大学は、自己血輸血の臨床応用を阻む一つの要因、一度、血管外へ出た血液の細菌汚染をコントロールする手法について研究を行った。なお、同研究では、一定量の細菌(大腸菌、ブドウ球菌、緑膿菌)を混ぜた新鮮な犬の血液と、それを洗浄し、白血球除去フィルターにて2回濾過したのちの血液に含まれる細菌の量の変動が観察されている。すると、作業工程を経た血液からは細菌が検出されないことが判明したとのことである。

上記のことから、洗浄と濾過によって血液を浄化すれば、細菌感染のリスクを限り無くゼロに近付けた自己血輸血が出来るものと考えられる。よって、将来的に、今回紹介した手法をモデルにした血液浄化システムが確立され、輸血用血液の入手自体に頭を悩ませることの多い小動物臨床において、自己血輸血が一般的な治療法となることを期待している。

本研究では、洗浄の段階で85%以上、1回目の濾過の段階で99%以上の細菌が排除されていたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32166777


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