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犬の腎不全に続発する心血管系疾患の有無について検証した研究

投稿者:武井 昭紘

人医療の循環器科では、全身に血液を送るポンプ機能を有する心臓と、体内に発生した老廃物を排泄しながら全身の血圧をコントロールする腎臓は生理学的に深く関与し合っているという概念が存在しており、それを「心腎連関」と呼んでいる。また、生理学に限ることなく、両臓器の疾患どうしも臨床病理学的に「お互い」に影響し合い、複雑な病態(心血管-腎臓系疾患、cardiovascular-renal disorder、CvRD)を形成すると言われており、具体的には、腎臓病に伴う心血管系疾患(Cardiovascular disease/dysfunction secondary to kidney disease、CvRDK)が、慢性腎不全(chronic kidney disease、CKD)に罹患したヒトの死因となることもあるようなのだ。

 

と、ここで、小動物臨床に携わる者ならば、ある疑問を抱かざるを得ない。
『果たして、獣医療においても同様の現象は起きるのだろうか—–?』

 

そして、「それ」に焦点を当てた研究が、イギリスのブリストル大学から発表された。

なお、同大学によると、①心疾患を持たないCKDの犬と②臨床上健康な犬を対象にして、心機能および腎機能検査(詳細はリンク先をご参照下さい)の結果を比較したところ、②よりも①において、血漿中の心臓トロポニンIとN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(N-terminal pro-B-type natriuretic peptide、NT-proBNP)の濃度が有意に上昇していたとのことである。

上記のことから、CKDを抱える犬では、何らかの心臓への負荷がかかっていることが窺える。よって、今後、CKD症例の血漿中心臓トロポニンI濃度、NT-proBNP濃度を低下させるために有用な治療法を探る研究が行われ、小動物臨床におけるCvRDKの全容解明へと一歩でも近付くことを期待している。

心エコー図検査では、両者(①と②)の間にある有意差が明らかになっていないため、症例数を増やした大規模な臨床研究にて再検証することが望ましいのかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31982083


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