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腎不全の猫におけるアモキシシリン・クラブラン酸の投与量を再考するキッカケを作った研究

投稿者:武井 昭紘

アモキシシリン・クラブラン酸は、ヒトの医院および動物病院にて一般的に使われる代表的な抗生剤の一つで、βラクタマーゼを有する耐性菌に効果を発揮する性質を持ち、且つ、腎臓を経由して排泄される薬剤として広く認識されている。そのため、人医療では、腎機能が低下した患者に同成分を投与する際に、血中濃度が適切な範囲を超えないように用量を調節することが必要であると言われている。しかし、一方で、動物向けに製品化されたアモキシシリン・クラブラン酸(商品名:Clavamox)の添付文書には、腎機能と用量に関する注意事項は記載されていない。

そのような背景の中、オハイオ州立大学は、高窒素血症を伴った腎不全(azotemic chronic kidney disease、azCKD)に罹患した猫を対象にして、アモキシシリン・クラブラン酸投与後における副作用の発現と、血液中および尿中の薬剤濃度を測定する研究を行った。すると、azCKDの猫では、腎機能が低下していない個体群と比べて、副作用の発現する割合が約4倍高く、尿中のアモキシシリン・クラブラン酸濃度(血液中濃度と負の相関がある)が低いことが判明したとのことである。

上記のことから、何らかの理由にて、腎機能が低下している猫にアモキシシリン・クラブラン酸を使用する場合には、既存のものより少ない用量で投与することが望ましいと考えられる。よって、今回紹介した研究を基に、azCKDに対する当該薬剤の薬用量が設定され、ガイドライン化れることに期待している。

本研究におけるazCKDは、慢性腎臓病と臨床的な診断がなされているとともに、2.0 mg/dLを超えるCREおよび1.035未満の尿比重を認める症例であると定義されております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31660773/


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