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結腸の全層を切開した犬における予後に関して解析した統計学的研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床において、異物、腫瘍、重積、外傷などを原因として正常な結腸の構造を損傷した場合に、結腸の一部を切除する外科手術が適応される。また、この時、術後に最も注意を払うべきことが「術野の裂開と合併症による死亡」とされている。そのため、どのような条件に陥った症例が裂開や死亡のリスクを抱えるのかについて把握することが重要であると考えられる。

 

そのような背景の中、アメリカの大学らは、高次診療施設を訪れた犬を対象に、結腸の全層切開術を適応した個体(90例)の予後を追跡する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆結腸の全層を切開した犬の予後◆
①術野が裂開する確率は10%で、死亡率は17%であった。
②術前に食欲不振、低血糖、好中球の中毒性変化を呈する症例では、死亡率が高かった。
③術前に抗生剤を使用した症例では、死亡率が高かった。
④術野が裂開する確率が高まるのは、
・結腸に外傷を抱えた症例
・腹膜炎を認める症例
・血液製剤または2種類以上の抗生剤を投与した症例
・切除した組織を用いた細菌培養が陽性となった症例
・open abdominal managementによる腹膜炎の管理をした症例
であった。

 

上記のことから、同大学らは、結腸に対する外科手術を実施する際には、敗血症の有無を慎重に検討することが非常に大切であると結論付けている。よって、該当する臨床症状を呈していたり、何種類もの抗生剤で管理した病歴を持つ症例に遭遇した場合には、治療として結腸の全層切開が必要だとしても、オーナーと「そのリスク」について充分に話し合うことが重要なのではないだろうか。

術野が裂開した症例の約56%が死亡し、または、安楽死されたとのことです。

 

参考ページ:

https://avmajournals.avma.org/doi/abs/10.2460/javma.255.8.915


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