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犬に硬膜外麻酔をかける際の毛刈りに用いるバリカンの刃と皮膚トラブルの関連を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

改めて文章にするまでもないかも知れないが、ある神経の分布域に広く麻酔をかける手技である硬膜外麻酔を動物病院で実施する場合は、中枢神経系における感染症を防ぐために、麻酔薬の投与に使う注射針を刺入する部位とその周囲に生える被毛を刈ることが一般的とされている。しかし、一方で、この毛刈りによって、硬膜外麻酔をかける動物に、炎症、受傷、感染などの皮膚トラブルが起きてしまうことは少なくなく、感染症予防を目的とした処置(毛刈り)が、かえって感染症の原因になってしまうことも珍しくない。

そのような背景の中、アメリカ合衆国の西部に位置するネバダ州に拠点を構える動物病院は、硬膜外麻酔を施した犬60匹以上を対象に、バリカンの刃の種類と皮膚トラブルの関連性を明らかにする研究を行った。なお、同研究では、同一個体の被毛を①No,10(被毛の長さを1.5mmに整える刃)および②No,40(被毛の長さを0.25mmに整える刃)で刈り取って、両領域での紅斑の発生率、細菌叢の変化、コロニーを形成する細菌の数が比べられている。すると、①よりも、②の方が、紅斑の発生率が上昇し、マイクロコッカス属の細菌が増えていることが判明したとのことである。

上記のことから、バリカンの刃を慎重に検討し、皮膚を傷つけないように細心の注意を払うことは、後に起きる可能性のある皮膚トラブル(紅斑)を減らすために、非常に有用だと考えられる。よって、今後、硬膜外麻酔に限ることなく、超音波検査、皮膚科診療、外科手術などへと幅を広げて、バリカンの刃の選択と皮膚トラブルの発生について調査が進んでいくことに期待したい。

今回紹介した研究では、毛を刈った皮膚から採取したサンプルを培養して形成されたコロニー数には、①と②の違いは認められなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://avmajournals.avma.org/doi/abs/10.2460/ajvr.80.9.862


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