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多発性外傷を負った猫における予後と死亡リスクについて解析した研究

投稿者:武井 昭紘

多発性外傷とは、外傷スコアで一定点数以上と評価された傷を同時に複数抱えている状態のことで、ヒトでは、交通事故などにより生じることが知られている。また、このケガは、傷の深さや大きさは勿論のこと、内臓のダメージに伴う多臓器不全症候群(Multiple Organ Dysfunction Syndrome、MODS)の有無でも、予後が左右される特徴を有している。しかし、小動物臨床で遭遇する猫の多発性外傷におけるMODSの有病率は分かっておらず、予後への影響力も不明なままである。

そこで、イタリアのボローニャ大学は、多発性外傷を負った猫38例を対象にしてMODSの有病率を算出するとともに、動物外傷トリアージスコア(Animal Trauma Triage Score、ATTS)と疾患重症度スコア(Acute Patient Physiologic and Laboratory Evaluation core、APPLEスコア)を用いて予後が判定できるか否かについて検証を行った。すると、約4割の症例がMODSを罹患しており、そのうち約65%が致死的経過を辿ることが明らかになった。さらに、ATTSおよびAPPLEスコアは、機能不全に陥った臓器の数と正の相関を示し、死亡リスクとも有意に関連していたことが確認されたとのことである。

上記のことから、両スコアは、多発性外傷の猫において、MODSの有無と予後を判定するツールとして有用であると考えられる。よって、今後、症例を増やした同様の研究が進められ、MODSを疑い、予後不良と判断を下すスコアの範囲(参照値)について、議論が尽くされることに期待している。

今回紹介した研究では、入院時の止血異常および呼吸状態の悪化も、死亡リスクを高めることが判明しています。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2019.00189/full


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