猫の代表的な感染症である白血病ウイルス(FeLV)感染症および免疫不全ウイルス(FIV)感染症は、日本を含めた世界各地にて発生していることが確認されているため、小動物臨床において、ごく一般的な疾患であると言える。しかし、両ウイルスに感染した個体の割合(有病率)は、多かれ少なかれ、国ごと地域ごとに差異があることも事実であり、何らかの要因によって「その差」が生まれていることが示唆されるが、未だ要因の詳細は明らかになっていない。
そこで、マイアミ大学らは、国の経済的格差と2つのウイルス感染症の有病率の関連性を検証する研究を行った。なお、同研究では、1人当たりの購買力平価に基づいた国内総生産(Gross Domestic Product at purchasing power parity per capita)を経済的格差として、FeLVまたはFIV感染症に関する47の文献を比較している。ところで、「1人当たりの購買力平価に基づいた国内総生産」とは、国別のGDPと物価を用いて算出した国民1人の「欲しい物を買うために遣える金額」、いわば、個人の経済力(GDPが高いだけで欲しい物が買えるとは限らないことに注意)と理解して頂けると有難い。
そして、研究の結果は、この個人の経済力が低い国・地域では、両感染症の有病率が高くなるというものであった。
上記のことから、世界の何処かで暮らす猫の感染症を減らすためには、獣医学的な教育の充実や獣医療レベルの向上とは別途にて、国民一人ひとりの経済力をアップさせることが重要であることが窺える。よって、ペットの感染症を予防する対策は、その国や地域の経済力を背景に考案することが必要なのではないだろうか。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31176263