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トラマドールの鎮痛効果を飛躍的にアップさせるかも知れない併用薬に関する研究

投稿者:武井 昭紘

トラマドールは、犬に対する鎮痛効果が期待できるオピオイドに分類される薬剤で、投与された生体内でM1(O-デスメチルトラマドール)に変換され、薬効を発揮すると考えられている。しかし、他のオピオイド系鎮痛薬と比較して、トラマドールは効果が弱いとする文献も存在していることが事実であり、薬理活性の高いM1が、既定の薬用量での投与では少ない、または、M1が早期に代謝され消失してしまう可能性が推察できる。故に、視点を変えると、M1が生体内で長時間作用する「環境」を整えることが叶えば、トラマドールの小動物臨床への応用が拡大していくものと思われる。

そこで、アメリカの大学らは、犬の体内でM1が増えるための条件に着目して、抗真菌薬であるフルコナゾールの併用におけるトラマドールの薬物動態について解析を行った。すると、フルコナゾールは、M1の形成を阻害することなく、むしろ、血漿中のトラマドール濃度とM1濃度を30倍以上に引上げ、M1を基に発生する代謝産物M2およびM5を減少させることが明らかとなった。

このことから、フルコナゾールの併用は、トラマドールの鎮痛効果を飛躍的にアップさせることが予想される。よって、フルコナゾールと同様の作用を持ち、薬剤耐性菌の出現や副作用の発現を最少限に抑えられる薬効成分を時間をかけてでも探していくことが、今後の課題であると言えるのではないだろうか。

今回紹介したトラマドールの研究のように、麻酔薬のデメリットを補うための手法が、数多く検証されていくことを期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30366901


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