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犬における膝蓋骨と大腿骨の滑車溝との関係を客観的な数値に変換した研究

投稿者:武井 昭紘

犬によくみられる関節疾患のひとつに膝蓋骨脱臼があり、グレード分類や術式の開発が確立されるほどに一般的な後肢のトラブルとして、獣医療では認識されている。しかし、極軽度の脱臼、例えば、自宅で膝蓋骨が脱臼して痛みを訴えるも来院時には自然に整復している症例などを、経験の浅い獣医師が診察する時は、非常に苦慮したり、不安を抱きながら業務を遂行するようで、おそらく、客観的(数学的)に当該疾患を捉える評価法が切に望まれているのではないかと、筆者は推察している次第である。故に、卒後教育や新人が取り組みやすい獣医学の発展という観点から、以下の研究を紹介したい。

今年の10月初め、イタリアのビコッカ大学(ミラノ)および動物病院は、①犬の膝蓋骨の厚さ(patellar maximal craniocaudal thickness)と②滑車溝の深さ(trochlear depth)を3D構築されたCT画像を用いて計測し、①/②の形式で比を算出するという研究を発表した。なお、同研究では、比の平均が0.46、つまり、②が覆っている膝蓋骨の範囲は①の約半分であることが判明したとのことで、大学らは、今後、犬種別の解析を進めて①/②が示す数値の理解を深める必要があると結論付けている。

上記のことから、本研究(CT検査)で用いられた比をX線検査(スカラインビューなど)に応用することが叶えば、一次診療ないしは新人獣医師へと広く普及させることが容易となるため、適切な値を得るためのX線検査撮影法に関するガイドラインの作成も検討されていくことに期待している。

心エコー図検査のように、本稿で紹介した比を自動的に算出してくれるデジタルレントゲン装置が開発されると、非常に便利だと思います。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30300915


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