ニュース

椎骨心臓総計法(VHS)から派生して左心房拡大に特化した心臓評価法

投稿者:武井 昭紘

犬は加齢とともに循環器疾患、特に僧帽弁閉鎖不全症(myxomatous mitral valve disease、MMVD)を患う個体が増加していくため、診断から治療経過の長期的モニタリングに至るまでの病態を追跡できる様々な検査法が確立され、小動物臨床へと応用されている。その中でも、1995年にBuchananらが提唱した椎骨心臓総計法(vertebral heart scale、VHS)は非常に有名で、X線検査における心拡大を数値化できる優れた評価法であると言える。しかし、VHS法は、心臓「全体」の大きさを算定する方式を採用していることから、MMVDなどの左心系への負荷が増大する疾患に絞った検査法とはならず、心エコー図検査に匹敵する特異性を発揮できないというデメリットを抱えている。

そこで、カリフォルニア大学は、X線検査を用いた左心房サイズ計測法の開発を目的とした研究を行った。なお、同研究では、左心房の①短径および②長径を椎体数に変換して①と②の合計を算出するシステムである椎骨左心房総計法(vertebral left atrial size、VLAS)が用いられ、ステージ別にグルーピングされたMMVD症例が比較されており、VLASが2.3以上を示すと左心房拡大であると判定できることが分かっている。

上記のことを基に、VHSを四分割して、VLAS(左心房)、VLVS(左心室)、VRAS(右心室)、VRVS(右心室)を標準化すれば、胸部X線検査による心臓の評価精度が高まるのではないだろうか。よって、今後、VHSまたはVLASを派生させた四腔別評価法について、更なる研究が進んでいくことを期待している。

(画像はイメージです)
仮に、椎骨大動脈総計法(VAoS)、椎骨肺動脈(VPAS)なども開発されるようになると、X線検査における心臓評価は想像を超えて細分化・高い精度化されていくのかも知れません。

 

参考ページ:

https://avmajournals.avma.org/doi/abs/10.2460/javma.253.8.1038


コメントする