米中西部ネブラスカ州ダグラス郡で、同州でこれまで確認されたことのなかった狂犬病ウイルスの変異株に感染した子猫が見つかった事が分かった。当局はこの変異株が定着すれば人間にも危険がおよぶとして対策を急いでいる。
記事によると、子猫が感染した変異株は通常アライグマに関連しているもので、米国の南東部では一般的。しかし、アパラチア山脈以西ではあまり見られず、感染した猫は生後わずか数カ月とみられる野良猫だという。
連邦政府と州、地元の保健・野生生物管理当局は、ダグラス郡でアライグマの捕獲・検査・ワクチン接種を実施すると発表。当面の目標として、同地域の個体数の約60％に相当する1000匹のアライグマを捕獲する予定。この地域でこれほどの規模の狂犬病予防措置が取られたのは初めてとなる。
アライグマは都市部に多く生息しており、猫や犬などのペットや家畜と接触する機会が多いことから、特に懸念される動物となっている。ただアライグマ以外にも、キツネやスカンク、コヨーテなどの野生動物にも感染する恐れはある。
ダグラス郡保健局トップは、変異株が地元の野生動物の間に広まり、狂犬病の症例やヒトとの接触が大幅に増加することが最も懸念されると説明。「狂犬病はあっという間に雪だるま式に増えていくもの」とし「拡大や定着を防ぐためにあらゆる適切な手段を講じている」と述べた。10人が子猫に接触した可能性があるが、全員が狂犬病の予防治療を開始しており経過は良好という。
当局によると、ダグラス郡で狂犬病に感染している猫が見つかったのは約20年ぶり。子猫の感染経路はわかっていない。この地域で狂犬病に感染する動物はコウモリが主となっている。 狂犬病ウイルスは感染した動物との接触により広がる。主に動物にかまれた際に唾液を介して感染するが、まれに脳や神経の組織を通じて感染することもある。
感染はワクチン接種により予防可能で、感染した場合でも暴露後ワクチン接種を繰り返し受けることで発症を防げる。ヒトへの感染のほとんどは犬を介したもので、世界各国で犬などへのワクチン接種が行われるようになってから症例は激減した。
米国では1900年代初頭、毎年100人以上が狂犬病で死亡していたが、1960年以降の死者は毎年1～2人に減少している。狂犬病は今も世界各地で大きな公衆衛生問題となっており、毎年5万9000人が死亡していると推定される。
狂犬病には治療法がなく、発症するとほぼ必ず死に至る。潜伏期間は数週間、数カ月あるいは数年の場合もあり、発症後は協調運動の欠落、水に対する恐怖、幻覚、不眠などの症状が現れる。
＜2023/10/23 Forbes JAPAN＞
米ネブラスカ 狂犬病の子猫発見 州内初の変異株（写真と記事は関係ありません）
