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胃拡張・捻転症候群の犬の生存率を大きく左右する「ある一つ」のファクター

投稿者:武井 昭紘

犬の胃拡張・捻転症候群(Gastric dilation-volvulus、GDV)は、何らかの原因によって胃にガスが貯まって拡張や捻転を起こし、重症となれば捻転に巻き込まれた組織の壊死や電解質異常を伴って致死的経過を辿ってしまう消化器疾患である。故に、外科手術によって胃の拡張や捻転を解消することが治療となるのだ。しかし、この外科手術には、とにかく費用が掛かる。その深刻さは、海外において、安楽死が選択されるほどにである。何か、現状を打開する策はないものだろうか—–。

 

そのようや背景の中、オーストラリアのメルボルン大学と動物病院らは、GDVを罹患して救急外来を訪れた犬で、保険の加入状況が分かっている症例の生存率を算出する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆GDV症例の生存率とペット保険◆
・260件の症例を追跡した
・100匹以上が退院せずに亡くなった
・その80%近くが手術しないまま安楽死となった
・安楽死される確率は、保険に加入している犬で10%で、していない犬で37%だった
・保険の有無で安楽死のリスクが7倍以上変わる
・手術を受けた犬の86%は退院できている
・退院できる確率は、保険に加入している犬で80%で、していない犬で50%程度に留まる

 

上記のことから、ペット保険の加入状況は、GDV症例の生存率を大きく左右することが窺える。つまり、手術費用の一部あるいは全額が保険で補填されることが、彼らの生死を分けていると言える。ならば、GDVが発症しやすいとされる犬種にはペット保険の加入を推奨する(義務付ける)。これが、冒頭で述べた「現状を打開する策」なのではないだろうか。

GDVのように、ペット保険の加入が生死を分ける疾患が他にもあるか否か。今後、一つひとつ解明されていくことを期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7752994/


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