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度重なる誤食で病態が複雑になったゴールデンレトリバーの1例

投稿者:武井 昭紘

サウスカロライナ州フォートミル。6歳になったゴールデンレトリバーのソーヤーが、子供のオムツに塗って赤ちゃんの皮膚のかぶれを防ぐクリームを誤って食べた。そのクリームには亜鉛が含まれていた。一般的に、クリームに含まれる亜鉛の含量は少ない。クリームを吐き切ってしまえば、大事になることはないのだ。案の定、彼は嘔吐した。木曜日の深夜のことだった。

 

翌朝、金曜日。彼の体調は芳しくない。心配になったオーナーはPet Poison Helplineに相談を持ち掛ける。『これ以上、クリームを摂取することはないだろう』と考えたセンターのスタッフは明日には快方に向かうと判断し、自宅で静養することを奨めた。万が一、症状が改善しない時は動物病院に彼を連れて行くことを条件にして。

 

日曜日。状況は変わらなった。彼は倦怠感を感じているようだった。救急外来へと向かう。X線画像に異物は映っていなかった。そこには、食べ物で埋め尽くされた胃があるだけであった。診察を担当した獣医師はセカンドオピニオンを得ることを薦めた。

車で30分の移動をして、二軒目の救急外来。X線検査と超音波検査によって、異物が発見された。1軒目の動物病院で食べ物と思われた胃内容物は、異物だった。その全てがヘアゴムだった。数にして、数百本。彼に外科手術(異物摘出術)が適応された。ヘアゴムに付着したクリームが病態を複雑にしたようであった。それも無くなった今、これで事態は解決する。そう皆が期待した。

 

手術翌日。彼は暗赤色の尿を排泄した。加えて、赤血球数が低下した。未だ亜鉛中毒から脱していない。そう考えざるを得ない状況であった。胃の襞(ヒダ)にしつこくクリームがへばり付いているような印象だった。更に、手術部位感染が発生。抗生剤療法とともに、2回の輸血療法が行われた。幸いなことに、その後の経過は良好。完全に回復した。

 

皆様の飼育している犬には、何でも飲み込んでします癖はあるだろうか。もし、あるならば、充分に気を付けて欲しい。ソーヤーのように、度重なる誤食は病態を複雑にしてしまうからだ。彼らの口が届く範囲に「飲み込める物」を置かない。ゆめゆめ忘れることなく、肝に銘じて頂けると有難い。

犬や猫を飼育する世帯では、身の回りの生活用品が1個無くなった時点で、誤食の可能性を疑うべきだと思います。

 

参考ページ:

https://www.dvm360.com/view/golden-retriever-ingesting-diaper-cream-leads-to-another-deadly-discovery


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