ニュース

膀胱穿刺によって採取された猫の尿を用いた細菌検査と薬剤耐性の現状

投稿者:武井 昭紘

長い年月をかけて築き上げられた獣医学では、猫の細菌性尿路感染症(Bacterial urinary tract infections、UTI)は稀だとされている。しかし、近年の研究においては、稀ではなく高い有病率を誇っているとも報告されているという。仮に、そうであるならば知らなければならないことがある。UTIを抱える猫から検出される細菌種と薬剤耐性の状況を。

 

冒頭のような背景の中、イギリスのエディンバラ大学は、膀胱穿刺で採取されて同国の検査センターに提出された猫の尿サンプルを解析する研究を行った。すると、2700検体以上のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆膀胱穿刺で採取された猫の尿の細菌検査◆
・約16%(420検体以上)から細菌が検出された
・分離株は440以上に及ぶ
・最も一般的な細菌は①大腸菌であった(約44%)
・次いで②大腸菌以外の腸内細菌科が続いた(約26%)
・③腸球菌(約15%)と④ブドウ球菌(約9%)も検出された
・①では主にセファレキシン(約21%)とアモキシシリン(約17%)に対する耐性が確認された
・②ではアモキシシリン(約64%)とセファレキシン(約52%)に対する耐性が確認された
・③ではST合剤に対する耐性が確認された(約94%)
・④ではアモキシシリンに対する耐性が確認された(20%)

 

上記のことから、猫の尿サンプルから細菌が検出されることは稀と言える程に珍しくはないことが窺える。また、検出された細菌の一部は薬剤耐性を獲得していることも分かる。よって、膀胱穿刺尿から細菌が分離された猫に抗生剤療法を適応する場合は、薬剤感受性試験を実施することが望ましいと思われる。そして、犬と同様に、猫の無症候性細菌尿に対する抗生剤療法の是非について議論が深まることを期待している。

サンプルは、2018年1月〜2019年2月の14ヶ月間に提出されたものを採用してきるとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36496905/


コメントする