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呼吸困難・食欲不振・貧血を主訴に動物病院を訪れた猫に起きた肺血栓塞栓症

投稿者:武井 昭紘

呼吸困難、食欲不振、貧血を主訴に3歳齢の猫が動物病院を訪れた。胸部X線検査にて心肥大と肺水腫、心エコー図検査にて三尖弁逆流(軽度)と右心房・右心室の拡大が認められた。原因は心臓病。そう疑われる所見の中で、主肺動脈に血栓が見付かる。果たして、本症例に何が起こっているのだろうか。

血液検査にて再生性貧血、自己凝集が確認された。呼吸困難、貧血、血栓に自己凝集。担当する獣医師は、免疫介在性溶血性貧血(immune-mediated hemolytic anemia、IMHA)および肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism、PTE)を疑った。ICUで酸素療法を行いつつ、ダルテパリンとプレドニゾロンが投与された。すると、症例の病状は安定し、血液検査における貧血もオーナーが訴える症状(主訴)も改善した。

症例を報告したエジプト・日本の大学と動物病院らは、この病態を「IMHAに続発したPTE」と診断した。また、今回紹介した病的現象は稀だと述べる。果たして、同様の症状を呈する猫の中で、「IMHAに続発したPTE」はどれ程の割合で発生しているのか。今後、有病率を算出する研究が進み、当該疾患と心臓疾患・呼吸器疾患との鑑別方法が確立することに期待している。

プレドニゾロンによる治療は56日目に中止され、その後はミコフェノール酸モフェチルに切り替えられたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36032299/


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