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スイスの高次診療施設を訪れた猫の食餌に関する情報

投稿者:武井 昭紘

読者の皆様の中にも経験された方は居るかも知れないが、食べ物は時に嘔吐や下痢などの消化器症状を起こす原因となる。また、腸内細菌の乱れを招き、腸の免疫機能へも影響を及ぼすのだ。そのため、消化器のトラブルを診察する際は、今までの食餌内容が問診で聴取され、必要に応じて食餌療法(食餌内容の変更)が適応されるのである。しかし、実際のところ、猫の食餌に関する情報がどれほど取り扱われているかを調査した研究は無いのが現状となっている。

 

そこで、スイスのチューリッヒ大学は、過去2年3ヶ月間(2017年10月~2020年1月)に初めて同大学付属動物病院の①消化器科または②内科を訪れた猫160匹以上の診療記録を解析する研究を行った。なお、②の症例数は膨大なため、慢性消化器症状を呈する猫が対象となっている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆スイスの高次診療施設を訪れた猫の食餌に関する情報◆
・食餌に関する情報が利用できる症例の割合は①で53%(③)、②で63%(④)であった
・以前の食餌試験が記録されていた症例の割合は③の29%(⑤)、④の8%(⑥)であった
・食餌試験に対する反応が記録されていた症例の割合は⑤の33%、⑥の75%であった
・①の76%(⑦)、②の63%(⑧)でオーナーに食餌に関する問診がなされていた
・現在猫が食べているフードの製造会社をオーナーが回答できた割合は⑦の82%、⑧の28%であった
・現在猫が食べているフードの商品名をオーナーが回答できた割合は⑦の61%、⑧の21%であった

 

上記のことから、消化器症状を呈する猫の診察であったとしても、彼らの食餌内容が不明(ハッキリしないまま)であるケースが珍しくないことが窺える。よって、今後、猫の食餌に関する情報の把握と彼らの治療経過との関連性を明らかにする研究が進み、食餌に関する情報の重要性が評価され、猫の消化器科診療のレベルが向上することを期待している。

複数回の食餌試験を受けた猫は居なかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36799862/


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