ニュース

呼吸困難を呈した6歳齢のキャバリアの心臓に起きていた異変

投稿者:武井 昭紘

6歳のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(不妊メス)が呼吸困難を呈したため、イギリスの高次診療施設を訪れた。品種を考慮すれば僧帽弁閉鎖不全症が第一に疑われるのだが、本症例には他にも症状があった。右眼に前眼房出血を伴う続発性緑内障を抱えていたのだ。加えて、1年前に胸骨(頭側)付近に発生した肉腫の切除術を受けた経歴も確認された。果たして、彼女の身に何が起こっているのだろうか。

身体検査では呼吸困難、収縮期雑音(左側胸部)、胸部X線検査では肺胞パターン(左肺の尾側、心臓と肺の血管の太さから非心原性)、心エコー図検査では左心系の血液の流れを妨げる腫瘤が認められた。心臓内の腫瘍。それを予後不良な病状と判断された彼女は安楽死された。剖検の結果、左心房と肺静脈に塞栓症が起きていたことが判明した。そして、その塞栓症の原因は転移性骨肉腫だった。心筋、肺、右眼、副腎。彼女の体の随所に腫瘍は転移していた。

症例報告を行ったイギリスの大学らは、『僧帽弁閉鎖不全症に一致しない所見を持った呼吸困難のキャバリアでは心疾患以外の病気も考慮するべきだ』と述べる。今回紹介した症例に類似した病態のキャバリアは他にも存在しているのか。今後、有病率を算出する研究が進み、呼吸困難の症例に正確な診断が下されるようになることを願っている。

本症例の僧帽弁と三尖弁には粘液腫様変性があったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35436728/


コメントする