ニュース

アイリッシュ・セッターが抱える「てんかん」の表現型と遺伝様式に関する研究

投稿者:武井 昭紘

特発性てんかん(idiopathic epilepsy、IE)は、一般の動物病院で良く見られる犬の神経系疾患で、且つ、発作を起こすことを特徴とし、一部の犬種で遺伝性が疑われている病気である。しかし、全ての犬種でその遺伝性や表現型が明らかになっていないのが現状だ。つまり、当該疾患をより深く理解するためには、これらの謎を解明する必要があると言えるのである。

 

冒頭のような背景の中、ユトレヒト大学および動物病院らは、IEが遺伝していると目されているアイリッシュ・セッターを対象にして、当該疾患の表現型と遺伝様式を調べる研究を行った。なお、同研究では、国際獣医てんかん特別委員会(IVETF)提唱する基準を満たす個体48匹のデータが解析されており、以下に示す事項が明らかになったという。

◆アイリッシュ・セッターのIEの表現型と遺伝様式◆
・発症年齢の平均は41ヶ月(約3.4歳)であった
・母集団のうち5匹は6歳以上で発症した
・大発作が最も一般的であった
・症例の約半数で群発発作が認められた
・56%のオーナーが前兆があると訴えた
・97%のオーナーが発作後期の異変(もうろうとした状態など)を訴えた
・常染色体劣性遺伝の様式は否定された

 

上記のことから、アイリッシュ・セッターのIEは3歳前後での発症が多く、半数以上の症例に前兆、大部分の症例に発作後期の異変が認められることが窺える。よって、当該品種を飼育するオーナーには、愛犬が3歳になるまでに少なくとも1回の健康診断を推奨し、前兆や発作後期の異変、そして、発作の発生状況を問診で聴き取ることが望ましいと思われる。また、6歳以上で発症した症例も居ることから、3歳発症グループと6歳発症グループの相違点を解析する研究が進み、アイリッシュ・セッターのIEの全容が把握されることを期待している。

本研究では、母集団のうち13匹の血統が調べられたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1066094/full


コメントする