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犬にピモベンダンを筋肉内注射した時の効果を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

状態の悪い心不全の犬を見て思う。薬を飲ませた方が楽になる。しかし、おそらく飲み込む力の無い彼に内服をすることは困難だ。経口ではなく、注射が選択できなければ投薬はできない。どうしたものか。循環器の治療に用いられる薬剤には内服薬のタイプが多い現状と、心不全という病態・症状は非常に相性が悪い。注射薬があれば、治療はよりスムーズなのに。更に欲を言えば、血圧が不安定な症例への投薬は静脈注射ではなく、皮下あるいは筋肉注射がベストだ。

 

冒頭のような背景の中、エジプト、トルコ、日本の大学らは、注射用ピモベンダンを健康なビーグルに筋肉内投与して、その効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、①プラセボとして生理食塩水を投与した時、②ピモベンダンを静脈内投与した時、③ピモベンダンを筋肉内投与した時における心エコー図検査の所見(15分間隔で2時間のモニタリング)が比較されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬にピモベンダンを筋肉内注射した時の効果◆
・①に比べて③で拡張期血圧および血管抵抗が有意に低下した
・①に比べて③で拡張早期波、僧帽弁の運動速度、一回拍出量、心拍出量が大幅に増大した
・②と③の血圧、心拍数、血管抵抗、心拍出量、僧帽弁の運動速度に有意差は認められなかった

 

上記のことから、③は②と同等に血行動態を改善する効果を発揮することが考えられる。よって今後、研究対象を心不全の犬へと移行して更なる検証が行われ、犬の循環器診療が進化を遂げることに期待している。

心エコー図検査は麻酔下で実施されたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.969304/full


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