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卵巣子宮全摘出術に臨む猫に対するブプレノルフィンの効果を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

果たして、どの麻酔薬が鎮痛効果を発揮しているのか。これは、外科手術をする上で認識するべき最重要ポイントである。中でもオピオイド系鎮痛薬は、オピオイドクライシスを懸念してか同薬剤を使用しないオピオイドフリーの麻酔(opioid-free anesthesi、OFA)の必要性も議論されており、近年注目を浴びているのだ。

 

冒頭のような背景の中、カナダと中国の獣医科大学らは、臨床上健康な猫30匹以上を対象にして、卵巣子宮全摘出術に対するブプレノルフィンの鎮痛効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、ケタミン、ミダゾラム、デクスメデトミジンの筋肉内投与、ブピバカインの腹腔内投与、メロキシカムの皮下投与というプロトコルが全例に適応されている。また、猫をブプレノルフィンの使用不使用で2つのグループに分けている(便宜上、使用グループを①、不使用グループを②とする)。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆卵巣子宮全摘出術に臨む猫に対するブプレノルフィンの効果◆
・術後に緊急で追加の疼痛管理を必要とした猫の割合は①で0%、②で約36%であった
・しかめっ面スケールのスコアは②でより高かった
・鎮痛効果をスコア化した場合において両群に有意差はなかった

 

上記のことから、ブプレノルフィンには緊急の疼痛管理を避ける効果があると考えられる。よって、猫の卵巣子宮全摘出術の管理で、術後に慌てて疼痛管理の内容を見直したくないと願う新人や経験の浅い獣医師は、術前にブプレノルフィンの単回投与を実施することをお薦めする。また、ブプレノルフィンのよりも恐らく流通しているだろうプトルファノールでも同様の研究が計画されることに期待している。

麻酔プロトコルの詳細は、リンク先の論文をご参照ください。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1002407/full


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