新しい抗生剤の開発と新しい耐性菌の出現を繰り返す現代において、これ以上の耐性菌を生まない医療・動物医療が理想とされ、抗生剤の使用に関するガイドラインが作成されている。しかし、人間の習慣とは恐ろしいもので、獣医学を学んだ獣医師であっても自身の抗生剤の使い方を簡単には変えられないというのが現状である。また、そういった獣医師の中には、ガイドラインの存在自体を認識していない者も存在しているのだ。では果たして、ガイドラインは抗生剤の不適切な使用を抑止する力となるのか。各国、各地域の実態を明らかにして、対策を考案することが重要である。
冒頭のような背景の中、コロラド州立大学らは、アメリカで小動物臨床に従事する獣医師を対象にして、5つの疾患(仮想のシナリオとして提示している)に対する抗生剤の使用に関するオンラインアンケートを実施した。なお、その5つの疾患とは、①犬の膿皮症、②犬の急性下痢、③犬の歯科疾患、④猫の上気道疾患、⑤猫の下部尿路疾患である。すると、2400件以上の回答が集まり、ガイドラインを認識している獣医師の②④⑤に対して抗生剤を処方する可能性が大幅に低くなることが判明したという。
上記のことから、ガイドラインは抗生剤の不適切な使用(乱用)を防ぐ効果を持っていることが窺える。よって、今後、ガイドラインの周知徹底をする卒後教育が全米で実施され、抗生剤と耐性菌の闘いに終止符が打たれることを期待している。

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本調査で判明した「ガイドラインを認識している獣医師の抗生剤を処方する可能性が大幅に低くなる」という事実の裏を返せば、「ガイドラインを認識していなければ抗生剤を処方する可能性が高い」となると思います。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35094489/