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消化器症状を呈する犬の血清中リパーゼ活性と膵臓の超音波検査所見

投稿者:武井 昭紘

犬の膵炎を診断する代表的な方法として、①血清中リパーゼ活性の測定と②超音波検査の2つが挙げられる。しかし、残念ながら、①と②の所見は必ず一致するとは限らないのが現状である。では実際のところ、臨床現場において、犬の膵炎と①または②の関連性はどうなっているのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、スイスのチューリッヒ大学は、消化器症状を認める犬230匹以上を対象にして、①と②に関するデータを解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆消化器症状を呈する犬の①と②◆
・①と②は弱い相関関係にあった
・①は初診より前に発現した症状の継続期間が短いほど高かった(②で異常所見が認められないことが頻繁に起きた)
・過去の膵炎の病歴は②の異常所見と有意に関連していた(①の上昇と有意に関連していなかった)
・紹介理由に「膵炎の疑い」または「リパーゼ活性の上昇」が含まれている場合は②で異常所見が有意に認められた
・膵臓の形態やエコー源性、腸間膜の超音波検査所見の変化が膵炎と診断されるポイントになっていた
・そのポイントが認められるとリパーゼ活性も有意に高かった

 

よって、①と②の一致性は乏しいものの、前述した特定の超音波検査所見は①の上昇と一致していることが分かる。よって、今後、これらの一致・不一致を加味した上で、膵炎診断のアルゴリズムが作成され、新人獣医師でも実践しやすい診断手順が構築されることを期待している。

①と②は初診から30時間以内に実施されているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35438226/


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