ニュース

肥大型心筋症の猫における好中球/リンパ球比の測定と予後

投稿者:武井 昭紘

好中球/リンパ球比(neutrophil-to-lymphocyte ratio、NLR)は、ヒトのみならず犬猫において、様々な病気の予後を推定する有用なマーカーとして注目を浴びている。一方、肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy、HCM)は、罹患猫を死へと誘うことのある恐ろしい循環器疾患として知られている。そこで、疑問が浮かぶ。NLRは、HCMを発症した猫の予後を推定するマーカーとなり得るのだろうか。

冒頭のような背景の中、アメリカの大学および動物病院らは、①臨床上健康な猫と②HCMの猫、合計96匹を対象にして、両者の心エコー図検査所見、NLR、転帰について解析する研究を行った。すると、うっ血性心不全を呈する猫のNLRは有意に高く、NLRの値を3分位数にした時、最も小さい値のグループに比べて最も大きい値のグループは約10倍、死亡するリスクが高いことが判明したという。また、NLRは、左心房のサイズおよび機能、もやもやエコー(spontaneous echo contrast、SEC)、血栓形成と有意に関連していることが確認された。

上記のことから、NLRの上昇は、HCMの猫の予後不良を示唆していることが窺える。よって、今後、罹患猫のNLRの上昇を防ぐ治療法を考案する研究が進み、HCMで苦しむ猫の予後を改善する、つまり、心臓突然死を回避する方法について深く議論されることに期待している。

動脈血栓塞栓症のリスクとNLRの関係性も明らかになると、猫のHCMをより深く理解できるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.813524/full


コメントする