僧帽弁疾患の犬にアンジオテンシン変換酵素阻害剤(angiotensin-converting enzyme inhibitor、ACEI)は効くのか。これは、永遠とも言える獣医学のテーマである。効果があると主張する論文もあれば、その効果を疑問視する研究者も存在しているのだ。果して、真偽の程は一体。研究の成果を一つひとつ丁寧に検証していく他は無いものと思われる。
冒頭のような背景の中、欧米の大学らは、ACEIの効果と有害事象を評価した過去の文献4件をレビューする研究を行った。すると、ACEIは、心肥大を「伴う」僧帽弁疾患の犬(①)がうっ血性心不全に陥るリスク、および、死亡するリスクを左右しないことが判明したという。一方で、あくまでも誤差の範囲を脱しないと大学らは述べつつも、ACEIは、心肥大を「伴わない」僧帽弁疾患の犬(②)がうっ血性心不全に陥るリスクを軽減させる傾向があることが確認できたという。
上記のことから、①にACEIを投与しても期待する効果は得られず、②に投与しても症状の悪化を防げる保証が無いことが窺える。よって、今後、僧帽弁疾患の犬がうっ血性心不全に陥るリスクを低下させる薬剤について、改めて見直す研究が計画され、議論の余地が無い治療法が確立されることに期待している。
参考ページ:
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jsap.13461