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世界13ヶ国において糞便移植の小動物臨床応用の状況を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

現在、小動物臨床において、腸内細菌叢と様々な疾患との関連性が注目されている。そして、そこで仮に関連性が認められれば、自ずと一つの治療法にも視線が注がれる。糞便移植(fecal microbiota transplantation、FMT)だ。では果たして、このFMTはどれ程、小動物臨床に普及しているのか。また、同技術の有効性とは。それらを明らかにすることは、動物医療を更に発展させる上で重要だと言える。

 

冒頭のような背景の中、エディンバラ大学は、大学が位置するイギリスを含めた世界13ヶ国で小動物臨床に携わる獣医師を対象にして、犬の疾患に適応するFMTに関したオンラインアンケートを実施した。すると、150件以上の回答を得て、以下に示す事項が判明したという。

◆FMTの小動物臨床応用の状況◆
・回答者の70%以上がFMTを行っていなかった
・FMTを利用している獣医師の70%以上には複数回の経験があった
・FMTが適応される疾患は慢性腸疾患(64%)、パルボウイルス感染症(21%)、急性下痢(15%)であった
・糞便を移植する主な経路は経腸投与(浣腸または内視鏡)であり、経鼻投与を行う獣医師も居た
・移植する糞便は新鮮な便または凍結した便であった(水や生食と混合、保存期間の中央値は90日)
・回答者の約20%がFMTを開始したい、約30%がFMTの使用を継続したい又は使用頻度を増やしたいと考えている
・投与量の変動は激しいものであった

 

上記のことから、約半数の獣医師がFMTをポジティブに捉えており、一度FMTを経験すれば二度三度と利用する機会が増えていく傾向があるものと思われる。よって、今後、FMTの有用性・安全性を検証する研究や、投与量の設定をする研究が進み、FMTが世界的に普及していくことを期待している。そして、有効な治療法が見付からない疾患を抱えた犬にとって、FMTが希望の光になることを願っている。

回答の40%は一次診療施設、60%は高次診療施設に所属する獣医師だったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1938973622000083


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