術後7日目。椎間板ヘルニアの手術(L1-2、右側、片側椎弓切除術)を受けた5歳齢、オスのダックスフンドの行動に異変が生じた。右の腹部腹側および術野周辺を咬んで、舐めて、吸うようになったのだ。加えて、その辺りに向かって吠えるようになったという。しかし、本症例には精神状態を安定させるガバペンチン(10mg/kg q8h PO)が投与されていたものの、術後3回に渡る臨床検査では神経学的に異常はなく、入院中に「そういった行動」は認められなかったとのことだ。そこで、彼の行動を観察するべく、再入院の判断が下される。だが、またしても異常な行動は確認できなかった。一体、彼の身に何が起きたのだろうか。
鎮痛薬パラセタモール(12mg/kg q8h PO)が投与される。しかし、退院すると行動は再発した。悩み考えた末にオーナーは口頭で注意をした。すると、彼は直ちに行動を辞めた。3日間の奮闘の結果、3回の再発ののちに行動は治った。投薬は中止され、以降2ヶ月再発はなかったという。
症例報告を行ったオランダの大学および動物病院らは、院内では認められず自宅でのみ確認できることから、異常な行動の原因として神経障害に伴う疼痛の可能性は低いと述べる。また、腹部を吸ったり、その辺り(尾の方向)に吠える行動は、強迫性障害や常同行動に似ていると訴える。加えて、自宅でのケージレストに伴うストレスが、そうさせたと推測する。散歩や遊びが制限されたフラストレーションが溜まった結果だと考えているのだ。読者の皆様が担当する症例に、同様の行動変化を示す犬は居るだろうか。もしも居るならば、その彼らのストレスを評価して欲しい。そして、ストレスを軽減する方法を検討して欲しい。

犬の強迫性障害では自傷行為を認める場合もあるとのことです。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1223800/full