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犬の体重に応じて前立腺の正常なサイズを算出する数式を開発した研究

投稿者:武井 昭紘

去勢手術を受けたオス犬では、前立腺の肥大およびそれに伴う炎症を罹患することが少なくなるとされている。しかし、ある研究によると、彼らは同臓器の形状に変化を与えることもある前立腺腫瘍(特に移行上皮癌)を発症するリスクを抱えるという。また、前立腺にリンパ腫が発生した犬(未去勢と去勢済みの何れも含む)では、前立腺肥大が認められたとのことだ。つまり、これらの腫瘍を早期に発見するためには、前立腺のサイズを観察することが重要だと言える。しかし、去勢オスの犬における前立腺サイズの参照値は報告されていない。

 

そこで、ベルギーのゲント大学は、前立腺疾患の兆候を認めない去勢オスの犬60匹以上を対象にして、彼らの前立腺のサイズを表すパラメーター(長さ、幅、高さ)をCT検査で測定する研究を行った。なお、同研究におけるパラメーターは、CT装置に対する熟練度が異なる3人の技師によって測定されている。すると、全てのパラメーターは、犬の体重が重くなる程または去勢手術を受けた年齢が遅い程、大きくなることが判明したという。また、前立腺の各パラメーターの期待値を算出する計算式は、以下のように表現できることが分かったとのことである。

◆犬の体重を基に前立腺のパラメーターを算出する式◆
・長さ= 15.3 + 体重(BW)×0.3 mm
・高さ= 9.7 + BW×0.16 mm
・幅= 9.5 + BW×0.2 mm

 

上記のことから、この式を使用して算出され期待値から外れたパラメーターを持つ前立腺には「何らかのトラブルが存在している」と考えることができるかも知れない。よって、今後、実際のパラメーターが期待値とどれくらい乖離したら異常と言えるのかについて検討する研究が進み、前立腺腫瘍の初期状態を早期に発見する検査法が確立されることを期待している。また、原則麻酔を要し、且つ、全て動物病院に普及していないCT検査ではなく、一般の動物病院にも普及している超音波検査において、前述した式が利用できるか否かを検証する研究も計画され、多くの動物病院で実践できる検査法が開発されることを願っている。

去勢をしていない犬でも同様の研究が行われると、前立腺疾患に対する診療のレベルが更に向上するかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34164446/


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