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乳腺癌を発症した猫の肺の状態を麻酔を使わずCT検査で観察した研究

投稿者:武井 昭紘

乳腺癌(mammary gland carcinoma、MGC)を抱えた猫を目の前にして、胸部レントゲン検査の必要性を考える。肺転移の有無を確認するためだ。しかし、CT検査と比べれば感度が低いことが悩ましい。だが、CT検査には全身麻酔が必要である。MGCに罹患しやすい老齢の猫には大きなリスクとなる。また、呼吸状態に影響を及ぼす全身麻酔では、無気肺を引き起こす可能性も否めない。検査結果の解釈が難しくなっては困る。どうしたものか—–。

 

そこで、タイの首都バンコクに位置するチュラロンコーン大学は、麻酔を使わずに猫のCT検査を実施する研究を行った。なお、同研究では、猫の姿勢をプラスチック製のキャリングボックスとタオルで整える形式が採用されている。すると、①レントゲン検査と比べて②無麻酔のCT検査では、確認できる肺結節の数が多く、より直径の小さい結節(最小の直径は①で2.5mm、②で1.0mm)も検出できることが判明したという。加えて、①では視認できなかったリンパ節の腫脹が、CT検査において観察できることも分かったとのことである。

上記のことから、MGCの猫を診察するにあたり、②は肺転移の可能性を精密に探る手段として有用であることが窺える。よって、今後、麻酔の掛かっていない猫を安全に固定するキャリングボックスの開発、または、市販のキャリングボックスに猫を安全に固定する方法に関する議論が進むことを期待している。

無麻酔でのCT検査では、猫の動きに応じたアーチファクトが画像に出現したとのことです
(そうであってもレントゲン検査よりも多くの情報が得られるという結論です)。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34229677/


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