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保護された子猫の下痢症における生存率から見える有効な治療法

投稿者:武井 昭紘

移動、ストレス、食餌、感染などキッカケは様々であるものの、幼若な犬猫には下痢症が起きやすく、その治療も原因に合せるように実に多種多様であり、経過もまた千差万別を極める。この事実は、オーナーの居るペットは勿論のこと、シェルターに収容された犬猫でも同様で、特に、保護動物における下痢症の治療反応性が「その後の里親募集」に与える影響力の大きさを念頭に置くと、シェルター内での当該疾患の治療成績を具に分析することは、殺処分ゼロを達成する上で、大変に重要なことであると思われる。

そこで、ノースカロライナ州立大学らは、約1年3ヶ月の期間を要し、シェルターに収容された子猫の下痢症の有病率、経過、治療反応性を統計学的に解析する研究を行い、以下に示すような結果を発表した。

◆保護された子猫の下痢症に関する統計学的解析◆
・1700匹を超える子猫のデータを集積
・約12%に下痢症が認められ、そのうち8割弱の個体(約170匹)に何らかの治療が施された
・治療をされた個体の11%が斃死または安楽死となった
・ビタミンおよびミネラルを含むサプリメントを投与された症例の生存率は、投与されていない個体のそれよりも、約13倍高い
・プロバイオティクス、抗生剤、抗コクシジウム剤による治療では生存率は改善されない

上記のことから、子猫の下痢症に最も有効な治療は、「ビタミンとミネラルの補給」であると考えられる。よって、今後、世界各地で保護をされて新しいオーナーとの出逢いを待つ子猫を下痢症から守るために、本研究に用いられたサプリメントの成分分析が進められ、グローバルに殺処分ゼロを達成する下痢症の治療法が確立されることを期待している。

抗生剤の乱用を防ぐためにも、ビタミンおよびミネラルの投与による下痢症の治療が普及していくことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30920335


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