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オーストラリアにおける犬のパルボウイルス感染症の実態調査から見えた悲しい現実

投稿者:武井 昭紘

犬のパルボウイルス(Canine parvovirus、CPV)感染症は、白血球の減少を伴う消化器症状を発現するとともに、嘔吐・下痢が続く一部の個体は短期間のうちに死亡してしまう危険なウイルス性疾患である。故に、ワクチン接種による予防医療の推進が重要であることは言うまでもないが、感染成立後に生死を分かつファクターについて、各国の情勢を踏まえた解析をすることも非常に大切だと言える。

そこで、オーストラリアは、1982年以来、26年ぶりにCPV感染症の実態を全国的に調査した。すると、下記に示す事項が明らかになったとのことである。

◆オーストラリアにおけるCPV感染症と現実◆
・推定20000匹を超える犬が年間に発症している
・約4割(地方や郊外が中心)が安楽死されている
・CPV感染症1件あたりの治療費は1500オーストラリアドル(約12万円)である
・治療費と安楽死件数は相関している

このことより、「獣医学的な斃死」よりも「経済的な安楽死」の方が、CPV感染症の死因として深刻であることが窺えるのではないだろうか。よって、動物福祉の観点から、オーストラリアは、現在、積極的に予防医療を啓蒙し、且つ、治療費の軽減措置(ペット保険の義務化など)を早急に考案する必要に迫られているものと思われる。

国内の経済事情は国ごとに異なるものの、享受すら出来ない高額な獣医療は、動物の命を守るために是正することが望ましいのではないでしょうか。

 

参考ページ:

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/tbed.13022


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