日本には30種類ほどのコウモリが生息しているとされています。人の家に住み着くコウモリはアブラコウモリという1種類のみで、蚊やゴキブリなどを食べてくれるので益獣と考える事が多いようです。身近なようで生態についてあまり知らないコウモリですが、日本の科学者がコテングコウモリについて初報告をしたことが分かりました。
記事によると、森林総合研究所の平川浩文氏と、北海道立総合研究機構林業試験場の長坂有氏が10年以上の研究を経て、コテングコウモリ(Murina ussuriensis)が冬眠する習性があることを確認。哺乳類で冬眠するのはホッキョクグマだけと考えられていたが、8月13日付けの学術誌「Scientific Reports」に研究論文を発表しました。
どのように冬眠をするのかというと、秋から冬にかけて気温が下がると枯れ葉の中や樹洞からコテングコウモリは寝ぐらを移します。雪に小さな穴を掘り、雪が体の上に降り積もっていきます。雪はコテングコウモリの体温で空洞ができるので、その中で春を待つのだそうです。
平川氏の論文によると、2017年12月上旬から2018年4月中旬まで4カ月以上、観察していたコウモリが積雪の中で冬眠していた証拠が示されています。コテングコウモリが作る「かまくら」の中は低温になるが、仮死状態と言えるほどの呼吸スピードと心拍数を下げて、体温調節を放棄して周囲の温度に身を任せて過ごすのだそう。
過酷な環境下での冬眠は危険も伴い、1匹のコウモリが命を落とした。しかし、36匹の他のコウモリが冬眠から目覚めたことから、失敗率は極めて低いとしています。他の動物に食べられてしまうことも考えられるが、捕食者は冬眠している彼らを見つけらないのだそうです。
また、ホッキョクグマは冬眠中少し体温を下げるだけだが、コウモリのような小型哺乳類は時々目を覚まして体温を上げる必要があるそうです。コウモリは目覚めるとすぐ水を探しに出かけますが、冬眠中はかまくらの中で壁をなめればいいようです。冬眠しているコテングコウモリを探すことは容易ではなく、13年かかったとのことです。
「結局、論文を発表するまでに13年かかりました」。平川氏らは特別に用意された研究資金はない中で、この研究を行ったそうだ。「時間はかかりましたが、巨大な研究資源に頼らずに、この研究をやり遂げたことを誇りに思っています」
<2018/08/24 National Geographic>