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オクラシチニブを投与された犬における腫瘍性疾患の発生を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

「本剤は感染症に対する感受性を高め、腫瘍(潜在性の腫瘍を含む)を悪化させる可能性があるため、慎重に投与し、継続的に観察すること」

動物医薬品メーカーであるzoetis社が発行している、アトピー性皮膚炎の治療薬アポキル錠(主成分:オクラシチニブマレイン酸塩)の薬効書に、このような記載がある。つまり、オクラシチニブを犬に投与すると、同症例が既に抱えている、あるいは、抱えているかも知れない腫瘍組織を増大する可能性があるということである。果たして、そのリスクとは、どれ程のものなのか。アトピー性皮膚炎の犬が「腫瘍までにも」苦しめられること想像すると、調べてみる価値はありそうだ。

 

そのような背景の中、アメリカの動物病院は、アトピー性皮膚炎に罹患した、600匹以上の犬を対象に、オクラシチニブ投与群(6ヶ月以上の投与)と非投与群における腫瘍の発生率を比較する研究を行った。すると、24ヶ月に及ぶ追跡期間では、両者の間に、有意差は認められなかったとのことである。

 

上記のことから、冒頭に記した注意事項に該当する現象は、オクラシチニブの長期投与でも起きづらいことが分かる。よって、皮膚科診療を業務とする獣医師には、本研究を参考にしてインフォームド・コンセントを組み立て頂くようにお願いするとともに、今後、1年を超えてオクラシチニブを投与されているアトピー性皮膚炎の犬を対象にして、同様の研究が進められることに期待している。

本研究では、両群の死亡年齢にも有意差は認められなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32808904/


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