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尿道括約筋機能不全の治療に使用するホルモン製剤で起きる子宮断端の変化に関する研究

投稿者:武井 昭紘

尿道括約筋機能不全(urethral sphincter mechanism incompetence、USMI)は、尿失禁の原因となる一般的な泌尿器疾患で、不妊手術を受けた雌犬(約20%)や20kg以上の大型犬(ドーベルマン・ピンシャー、ジャイアント・シュナウザー、オールドイングリッシュシープドッグ、ロットワイラー、ボクサー)が罹患しやすいと言われている。また、当該疾患は、性ホルモンであるエストロゲンに反応する特徴を有しており、各種エストロゲン製剤が治療薬として使用されることもあるのだ。しかし、このエストロゲン製剤には、いくつかの副作用があり、薬剤を投与された罹患個体に発情兆候、会陰部の腫脹・脱毛、膿性膣分泌物(細菌感染)、骨髄抑制などが発現することが知られているのである。

そこで、カリフォルニア大学は、不妊手術(卵巣子宮全摘出術)を受けた犬が発症したUSMIを対象にして、エストロゲン製剤(エストリオール)投与後の子宮断端の変化を超音波検査にて観察する研究を行った。すると、供試犬の約29%に子宮断端の変化が認められ、対照群(エストリオールを投与されていない不妊メス)に比べて、断端の横径が約2倍に腫大し、断端の高さと大動脈の比が1.5~2倍に拡大していることが明らかになったとのことである。

上記のことから、エストリオールは、子宮断端に組織学的変化を齎す効果を有していることが分かる。よって、今後、この変化と副作用の発現との間にある関連性を解析する研究が進められ、USMIをエストロゲン製剤で治療している犬における副作用のリスクを予測する超音波検査法が確立されることに期待している。

今回紹介した研究では、50%の症例にて、外陰部の変化が確認されたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32115075


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